周防大島という場所をどうにか活性化したいという思いがあるが、実際目を向けてみると、そこにあるのは温暖な気候と四周を海に囲まれた自然の恵みに尽きる。
まずは山口県一の生産量の“みかんの島”で知られるが、後継者難が問題。
それでもミカン農家は結構知恵を絞って新商品の開発等、さまざま工夫しているようだ。
次に海産物だが、じつは瀬戸内のイリコ(煮干し)の商品価値が高いということを最近知った。
近年日本の森が荒れ、海に流れ込む栄養素が欠乏しているらしいが、内海である瀬戸内は栄養分が逃げずにプールされるかたちで残るため、魚介類の栄養価が高いとのこと。
広島の牡蠣もおそらくこの恩恵を受けているのだろう。
イリコはいい出汁(だし)が出て、丸ごと食べられる(頭もワタも取る必要なし)、カルシウム等の微量栄養素のかたまりだが、どういうわけだかマイナーな感じがしている。
わが家でも、これまでこんなに近くに豊富にあるのに、ほとんど使っていなかった。
見直していざ使ってみれば面倒なことはまったくない。
おかげさまで現在体調もいい。
上物はそれなりに値が張るが、他にかける金を削って回す価値は十分あると思っている。
一昨日、NHKの“プロフェッショナル”という番組で、高知に住むデザイナーが農水産品のラベルや意匠を手がけて、すごい付加価値を生み出しているのを見た。
彼には日本の素晴らしい風景を守っていきたいという思いがあり、そのため一次産業をどうにか存続させたいというビジョンから、仕事をほぼこの方向に特化させている。
デザインの力はすごいなと思ったが、その仕事のベースには丹念な依頼先の調査・研究がある。
そして自分自身がよくよく作り手の姿勢や商品に納得・共鳴したうえで、ようやく仕事に取り組むのだ。
その仕事は作り手との共同作業である。
現在、周防大島の産物をアピールする試みとして、毎月一回“海の市”という言わば大島版ファーマーズマーケットが開かれている。
まだ一度だけしか見ていないが、やはり新鮮な海産物をはじめとした素朴な地元の食の展示場であった。
残念ながら来場客はまだ地元住民主体のようだ。
これからいかに島の外部から人を集められるかが存続のカギとなろう。
情報発信力が問われるところだが、いかなる情報を発信していくかというところで、やはりこのデザイン力なのではないか。
大島の食材の確かさを認めたうえで、決して奇を衒わない付加価値をじょうずにアピールすること。
そのためには大島自体、瀬戸内全体の価値にまで視野を広げた、地域の食としての認識が大切である。
件のデザイナー氏のように、地域の自然・景観・暮らしを守りたいという大きなビジョンが求められる。
微力だが、自分も島の全体像を意識した、島に“あるもの”の開拓に一役買いたいと願う。
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