2011年2月13日日曜日

照葉樹林文化

数年前、宮崎県の綾町というところを何度か訪れました。
ここは全国でも珍しく昔ながらの照葉樹林の森が残されている場所なのです。

照葉樹林とは簡単に言えば、シイカシツバキなど、葉の表面に光沢があって一年中落葉しない常緑広葉樹の森林のことです。

近年の杉・ヒノキの植林によってもうほとんど見られなくなってしまいましたが、この綾の森では植林事業にあえて異を唱えることで、この貴重な原始の森(といっても人の手が入ってはいますが)が守られています。


はじめてこの森を見た時はブロッコリーだ!と思いました(誰もが一様に感じるらしいです)。
色とりどりでモコモコした見慣れぬ森は、かつて西日本一帯に広がっていたそうです(屋久島の“もののけの森”もそう)。

そしてこの森はさらに中国の雲南地方を中心とした華南一帯、台湾、ブータンにまで広がって、文化的同質性を持ついわゆる“照葉樹林文化圏”を形成しています。
それは焼畑農業養蚕発酵食品といった自然由来のものから入れ墨などの各種民俗的慣習まで、ふしぎと日本古来の文化と共通した特徴を持っているものです(印象的なのはモチを好む傾向。“もちもち食感”はこの辺でも売れるかも)。

森林はその土地の気候風土の象徴であって、そこに生きる人間はその自然の有り様に規定されて生きざるを得ないので文化的共通性を持つのが当然なのです。

これからの日本がどういう方向へ進むべきか、依然アメリカをはじめ西洋先進国に歩調を合わせていくのか、あるいは地域的一体性を持つアジアのほうを向いていくのかといったことを考えるとき、この照葉樹林文化というのはひとつのヒントになる気がしています。

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