2011年6月20日月曜日

終わらない悪夢とブリューゲルの雪中の狩人

好きな映画の話。

惑星ソラリス”1972年ソ連映画、アンドレイ・タルコフスキー監督
(原作スタニスラフ・レム“ソラリスの陽のもとに”)

近未来、ソラリスなる星では、人間の精神構造に作用して、夜ごとその人の一番の心の傷が夢に現れる(ばかりか、“現実化”する)。
地球からソラリスに派遣される人間は、異空間で自分自身との葛藤に消耗していく。
そんな異様な状況への対応からか、ソラリスステーション内の図書室にはあらゆる地球の書物が揃えられていて、そのほか精神安定のためか名画のいくつかも飾られている。

そんな中の一枚がブリューゲルの“雪中の狩人”。


映画ではバッハのコラールが流れる中、丹念にこの絵をカメラがなぞり、いつしかそれは主人公の懐かしい故郷の風景と重なっている。

いつまでも終わらない悪夢の連続と、かつてあったふるさとのあたりまえの景色。

この映画を初めて観た時からふしぎと忘れがたい絵だったが、今まさに、なにか耐え難い魅力を持った絵に見えてくる。
四季のめぐりと繰り返される人間の営み。

この絵から人間の存在だけが抜け落ち(動物たちは残るだろう。放射能のことなど知りようもないから)、悲しい風景だけが残される。


ちなみにこの映画のリメイク版(S.ソダーバーグ監督、2002年アメリカ映画)はまったく別物なので注意。

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